事務所ブログ

2013.11.20更新

若年労働者の死亡逸失利益の算定のための基礎収入につき、現実の収入ではなく、平均賃金によるものとすべきとの裁判例です。若年労働者(30歳未満)は低所得者が多いため、平均賃金を基礎収入とするかしないかは逸失利益に大きな影響を与えます。学生の死亡逸失利益の算定に平均賃金を用いることとの均衡が考慮されています。

【東京地裁平成17年11月21日判決】
「本件においては,前記第2の1(1)記載の通り,本件事故発生当時,訴外Bは25歳と若年であったことが認められるから,死亡逸失利益の計算に当たっては,学生との均衡を考慮する必要があり,その基礎収入としては,平成15年賃金センサス女性労働者・学歴計の全年齢平均賃金(349万0300円)を採用するのが相当である。
 また,訴外Bは独身であった(前記第2の1(1)記載)ことから,生活費控除率は30パーセントとするのが相当である。稼働可能年数は42年(ライプニッツ係数17.4232)と認められる。
 そうすると,死亡逸失利益は,次の計算式のとおり,標記金額となる。
    (計算式)
    349万0300円×(1-0.3)×17.4232-4256万8536円
 これに対し,被告は,本件事故前年の訴外Bの給与は134万0277円であったことを指摘の上,訴外Bは自動車修理工場に勤め技術を習得中であったとのことであり,今後数年間は平均賃金を下回る収入が予想されたものであるから,将来的に賃金センサスを用いるとしても,死亡後すぐに賃金センサスを基礎収入として逸失利益を計上することには合理性がない旨主張する。
 確かに,訴外Bは高校卒業後,ペットショップ勤務を経て自動車整備士2級の免許を取得して自動車修理工場で稼働したこと(甲ロ8の3),その後自動車修理工場を解雇され,本件事故直前まで製本工場でアルバイトをしていたこと(甲ロ8の3),本件事故前年の給与は134万0277円であったこと(甲イ1),訴外Bは将来は自動車修理工場を経営したいとの希望を持ち,自動車修理工場に勤務しながら技術の習得に努めていたこと(弁論の全趣旨)が認められるが,他方で,訴外Bは,小学校から高校までの12年間皆勤賞をとったこと(甲ロ8の3及び弁論の全趣旨)に象徴されるとおり,精神的及び肉体的に頑健であったことが窺われ,転職や起業の可能性も十分あり得たものというべきである。そして,そもそも,若年労働者につき,学生との均衡等も考慮して賃金センサスの全年齢平均収入を基礎収入とする趣旨にかんがみれば,本件事故発生当時,技術を習得中であったという事情があったとしても,本件事故後数年間は平均賃金を下回る収入が見込まれていたとして減額するのは相当ではないというべきである。」

投稿者: 関川法律事務所

2013.11.13更新

株式会社である貸金業者からの借入は、途中で時効の中断がないまま弁済期から5年を経過すれば時効消滅します。
分割返済の場合は、期限の
時効の中断とは、時効の進行をゼロカウントに戻すことを意味しますが、民法147条によれば、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認が時効中断事由にあたります。
①請求とは、ただ単に「払え」と言うだけでは催告にとどまり、そこから6か月以内に裁判上の請求等をしないと時効中断の効力が生じません(民法153条)。なので、貸金業者は時効完成間際になると、時効中断のために訴訟を提起することがあります。裁判所に訴状を提出した時点で時効が中断します。
③承認というのは、債務があることを認めることですが、最も明確な承認は弁済をすることです。いくら「債務者が口頭で債務を認めた」債権者が言っても立証が困難ですが、弁済をすれば証拠上債務承認があきらかです。

では、時効期間経過後に「承認」をしたらどうなるか。
時効完成を知った上で承認をすれば時効利益を放棄したものとされますので、時効を援用できません。
では、時効完成を知らずに債務承認した場合はどうか。
最高裁昭和41年4月20日判決は、時効完成後にそのことを知らずに債務承認した場合、相手方は債務者はもはや時効を援用しないとの期待を抱くから、債務者信義則上時効援用権を喪失するとしました。
要するに、時効完成を知っていようがいまいが、債務承認をしてしまえば時効を援用できず、債務は消滅しないのです。

最近、何年も放置していた借入先から請求が来たという相談が頻繁にあります。
確認してみると、既に時効期間が経過していることが多いです。
その場合、弁護士から内容証明郵便で時効援用の意思表示をすると請求が来なくなるのが通常です。
ところが、時効のことを知らずに一部でも(仮に1,000円でも)支払ってしまえば時効の援用ができなくなります。
そのわずかな弁済が命取りになるのです。
もちろん、もともと返済義務があるものですから、返済するのが当然とも言えますが、時効で消滅したはずの債務が消滅しないというのはあまりに気の毒です。

以前、ある人が、既に時効消滅したかも知れないと思ってテレビCMでおなじみの事務所に電話したところ、事務員が応対し、そのことを知らずに「借りたものは返さないといけないんじゃないですか」と軽率にも返答したため、その人は債権者に支払ってしまい、時効援用権を喪失してしまったということがありました。
最後の返済から5年以上が経過した人は時効の援用ができるかどうか、弁護士に相談してみることが必要かと思います。



投稿者: 関川法律事務所

2013.11.07更新

相続手続において、税理士が登場するのは相続税申告の場面がほとんどでしょう。
その際、遺産分割協議書も税理士が作成するケースが散見されます。
しかしながら、遺産分割をめぐって法律問題が勃発することもあり、税理士に任せておけば大丈夫ということにはなりません。

例えば、相続人の中に成年被後見人がいる場合、成年後見人が遺産分割協議に参加することになりますが、成年後見人には善管注意義務という義務があり、成年被後見人の利益を第一に考えた処理をしなければなりません。
ところが、成年後見人が他の相続人の申し出に易々と応じ、成年被後見人の取り分を少なくし、他の相続人の取り分を多くしてしまうことがあります。このような処理をした成年後見人の処理は善管注意義務違反をということになります。
そのまま何の紛争も生じないことの方が多いでしょうが、問題となるのは、後日、何らかの事情があって成年後見人が交代したときです。後に成年後見人になった者から善管注意義務違反を理由として遺産分割時の成年後見人が損害賠償責任を追及されることがあるのです。
このような問題がはらんでいるにもかかわらず、この点に関する考慮を欠いた税理士作成の遺産分割協議書を見たことがあります。
やはり、税理士は税の専門家ですが、法律の専門家ではありません。
遺産分割には相続税の処理も大切ですが、後の紛争を防ぐためには弁護士に遺産分割協議書作成を依頼するのがベストです。

投稿者: 関川法律事務所

関川法律事務所 法律相談受付時間 平日9:30~21:00 お電話はこちら 06-6121-2931
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